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「さうです」
と気のない返事をした。
「わしは反対だ!」
「どうも、やつぱりねえ。調子が悪い」
「あ、神原の喜作さんだ」
房一が声をかけて回転椅子を押しやると、
徳次は房一が顔を洗ふ間傍に立つて眺めていた。それからふいに訊いた。
「や、皆さんどうも遅くなりまして――」
「さうか、惜しかつたな」
「この人はちっと眠むがってるでな……」
「たゞし、預かるだけだよ。この分が残つている間はいくら後から来ても貰はんよ。いゝかね」
彼は自信を失つた。それにこの苦痛と動揺は明らさまに説明しにくい、説明したところで判つてもらへない種類のことだつた。房一はそれを盛子の妊娠の揚合にも経験した。
「僕はクレーが済んでから行つたんでね、もう終りで相沢の馬が勝つところだけをちよつと見たよ。――相沢、得意さうだつたぢやないか」